アサガオの花弁におけるトランスクリプトームのデータベース

はじめに

トランスクリプトームとは、生きものの細胞の中で「どの遺伝子がどれくらい働いているか(発現レベル)」をまとめた情報のことです。遺伝子が働くときには、RNAという物質がつくられます。RNAは遺伝子ごとに決まっている情報(塩基配列:A・U・G・Cの並び方)をもっており、どの遺伝子がどのくらい活動しているかを知る手がかりになります。このデータベースでは、アサガオの花が咲く前からしおれるまでの3日半にわたり、RNAシーケンス(RNA-seq)という技術を使って、花弁の中のトランスクリプトームを3時間ごとに記録しました。

使い方

  1. データベースを選びます
  2. タンパク質の情報をもつ遺伝子のRNA(mRNA)の2種類と、それ自体が機能をもつRNA(ncRNA、lncRNA)遺伝子の2種類のデータベースがあります。

    AUGUSTUS mRNA (Hoshino 2016)
    AUGUSTUSというプログラムを使って推定した42,335遺伝子のmRNAが含まれています。全ゲノム配列を明らかにした星野らの論文(2016)で報告しています。
    Gnomon mRNA
    Gnomonというプログラムを使って推定した34,671遺伝子のmRNAが含まれています。
    Gnomon ncDNA
    Gnomonというプログラムを使って推定した5,310のncRNAが含まれています。
    Petal lncRNA (Nakagawa 2025)
    このデータベースを開発する際に新たに推定した5,364のlncRNAが含まれています。

  3. 遺伝子の名前、番号、キーワードなどを入力します。
  4. 選んだデータベースによって、入力できる内容が少し異なります。入力すると選択肢やチェックボックスが出てくるので、調べたい遺伝子を選び、「 グラフを表示」を押すとヒットした遺伝子の記録が表示されます。

    1. AUGUSTUS mRNA (Hoshino 2016)を使う場合
    2. 遺伝子シンボル
      遺伝子の多くにはアルファベットで数文字の略称(シンボル)がついています。これを入力します。同じ略称でも働きが違う複数の遺伝子や、同じ働きでも複数ある場合があるので、表示された選択肢から選んでください。
      遺伝子ID
      遺伝子に割り振られている番号を入力します。INIL(アサガオの学名Ipomoea nilの略)、XXg(染色体番号、00〜15)と5桁の数字からなります。他のデータベースや論文を参考に番号を探す必要があります。一度に50遺伝子を調べることができます。
      遺伝子機能キーワード
      遺伝子の働きがわかっていたり推測されていたりする場合、簡単な説明がついています。その説明に含まれる単語を入力すると、キーワード検索のように使えます。一度に3つまでの単語を入力できます。
    3. Gnomon mRNA/Gnomon ncRNAを使う場合
    4. NCBI/LOC 遺伝子 ID
      LOCとXではじまる番号があります。1つの遺伝子には1つのLOCと、1つ以上のXではじまる番号(XMはmRNA、XRはncRNA)があります。他のデータベースや論文を参考に探してください。一度に50遺伝子を調べることができます。
      遺伝子機能キーワード
      遺伝子の働きに関する説明に含まれる単語を入力して検索できます。一度に3つまでの単語を入力できます。
    5. Petal lncRNAを使う場合
    6. LTCONSではじまる番号を入力します。この番号は今回のデータベースについて報告した論文や、lncRNAの情報を登録した他のデータベースを参考に探します。

    グラフの見方

    横軸は、アサガオが咲く時刻を0とした時間を示しています。縦軸は遺伝子の発現レベルで、FPKM(Fragments Per Kilobase of transcript per Million mapped fragments)の値を、3回の実験の平均値 ± 標準偏差として表しています。背景の白と灰色は、それぞれ明るい時間帯と暗い時間帯を示しています。

    グラフや右側の遺伝子ID・略称にカーソルを重ねると、その遺伝子の簡単な説明が表示されます。遺伝子IDや略称をクリックすると、その遺伝子のグラフが非表示になり、ダブルクリックするとその遺伝子だけが表示されます。

    グラフの数値は左下の「Download CSV」からCSV形式で、画像は右上のカメラのアイコンからPNG形式で書き出すことができます。

    この例では、オレンジの線が細胞分裂に必要な遺伝子、青の線が24時間周期で変動する遺伝子、水色の線が栄養回収に関係する遺伝子を示しています。細胞分裂に必要な遺伝子は、開花の48時間前(2日前の朝)にはほとんど発現していないことから、その後は細胞があまり増えないと考えられます。24時間周期の遺伝子は明け方によく働くことがわかり、栄養回収に関わる遺伝子は花が開いた後によく働いていることが推測されます。